長寿ノミ屋と裏福祉施設

長寿リスクってのは
・予想外に長生きするかもしれない、という不確実性
・その不確実性から、老後の資金が足りなくなるかもしれない、というリスク

のことだが、こいつを取引可能にするには、市場のどこかに「ある集団が長生きすればするほど儲かる」参加者がいないとダメだ。そんな商売や立場の人がいるかといえばいなかろう。今はみんながリスクを売りたがっていて、引き受け手がいないのだ。80歳以上になるともれなく体内にレアメタルが形成されるとか、年をとればとるほどエロくなるとか、そういうブレイクスルーがあればまた話は別なのだが…
老いを金銭に変換する装置はまだないのだ。もしあれば、どんなに人類全体が豊かになることか。どう考えても無理筋っぽいが、ごくごく限られた範囲で、擬似的にこれを成り立たせることはできるのだろう。
(と考えてみると、年功序列というのはそのファンタジーを地上に建設しようとする使徒の画策であり、よくできている。)

長寿ダービーというか、その不確実性そのものを使って博打にすることはできないもんか?幸い、少子化で相続対象が少なくなり、資産ある老人は増えているので、それを生かすことを考えよう。漫画などで、老いた権力者の相続争いが盛り上がり、参加者一同が精神的に疲弊する話がよくあるが、それは博打に深入りしただけで、相続争いそのものは競馬や麻雀と同じく健全なゲームだ。この相続争いを貧乏人でも楽しめる、もっとカジュアルなものにしよう、という発想だ。

75歳までは一律相続税を100%で、その後は年齢が上がるほど相続税率が下がる仕組みがあったとする。ある程度の資産をもつ老人のまわりには、ドーピング漬けにしてでもご老体を生かそうとする家族が群がるだろう。それでは困るので、政府にも相続Gメンのような部隊ができ、レギュレーション違反を細かく検知していく。長寿は老人本人にとっても望む所だが、ドーピングを使ってまで、という老人がある程度集まれば、エージェントをやとって「自分の望む死期で死ぬ権利は人間の最後の尊厳だ、ハイエナは去れ」というアクションが可能になる。
このエージェントはノミ屋の働きも兼ねるので、外部の参加者が外馬に乗ることも可能である。やくざが元請けをすると、ご老体に生き延びてもらうことが密接な利益となるので、環境や食材にこだわり精神衛生もよろしいヤミ福祉施設が誕生する。あとは非合法の沼をくぐり抜けるためにそれを銀行なりが買収すれば良い。これだと国VS民間セクターで博打が完成する。

たとえば一年ごとに3%税率が下がると、実物と金銭合わせて1億円ある老人は、一年生き残る度に300万円のボーナスがもらえる。100人集まれば3億円だ。これだと安すぎるかなあ。