卵と壁のたとえ話が超すごい

村上春樹エルサレム講演で「卵と壁」のたとえ話が出てくる。前者は生とか矛盾とか人間を指し、後者はthe systemを指すようだ。
このキーワードを知って、世の中にこんなにうまい言い方があるのか、と心底びっくりした。3文字で3000年くらいの歴史を説明してしまうレバレッジの高さもさることながら、こういう話が好きな人には一発でわかり、初心者にも興味をひかせる圧倒的なつかみがすごい。しかもこの言い方だと悪いのは壁(を有む壁(を有む壁...)))だから、悪者さがしをしなくてよい。つまり敵や怨念をつくらないため、後味がすがすがしい。
国民主権なのはなんで?」「セクハラってなんでダメなの?」「アルバイトなんだけど厚生年金入っていいの?」というテーマで人と会話するとき、よくわかってないんで説明がどうしてもしどろもどろになる。しかしこれからは「おれらは卵として壁に中指を立てねばならないから、おれらの先輩も苦労して戦ってきて、だからこういう諸制度があって...」と説明できて便利だ。

読んだ人の心をほんの少しほがらかにし、ために職場の機嫌をちょっと良くし、しかも言葉だから0円で無限回コピーされる。そんでこれから少なくとも20年くらいネット上に残って語られる。ありふれた言葉なのに、その冨の創出能力はすさまじい。
たった3文字で、なんだかんだ3000億円くらい実質GDPの向上に寄与すると思う。



inspired by :
ある広告人の告白(あるいは愚痴かもね): 村上春樹「僕はなぜエルサレムに行ったのか」を読みました
集合知は「正しさ」の最適解を出すか - はてブついでに覚書。
2009-02-19 - 赤の女王とお茶を