mement mori

mement moriという言葉がある。「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句らしく、すわりがよいので歌や映画のタイトルにもなっている。非常に重要なメッセージだし、音節が格好いいこともあって、なんとなく忘れずに覚えている。
このセリフは「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな、よく考えよ、そうすれば(そうすることによってのみ)より充実し深い生をおくることができるだろう」という意味だと思う。が、われながらアホらしくもびっくりしたのが、自分に対してその意味と真逆な作用をこのセリフが果たしていたことだ。ついこないだまで、生と死について考え込まされるような身の回りの事件があったとき、「無情だなあ、mement moriだもんな」というような感想をぼんやり抱くことで満足し、うまい具合にそれ以上の思考が停止していた。私は「mement mori」というセリフを思い出すと、うまい具合に死の恐怖を忘れることに成功していた、つまりこのセリフを死を忘却するスイッチとして使っていたのだ。この忘却作用は本当に無意識に行われていて、最近なんとなく気づき、ぞっとすると同時にあまりのアホさにひきつり笑いになってしまった。

こういう感じに言葉に騙されてることって、今もあるんだろうし、これからもあるんだろうなあ。ただただ恐ろしくもマヌケだ。何とかならんのかね。