格差は胎内から

AERAの今年三月くらいの特集記事に「格差は胎内から」というタイトルがあった。
これは敵の攻撃であり、呪いの言霊そのものであり、何食ったらこんなキャッチコピーがひねり出せるようになるのか見当もつかん。何が凄いって、このキャッチコピーを見て幸せになる人の数が厳密に0な点だ。仮に内容が正しかったとして、対策が原理的に無理なところが不安と恐怖を煽る。一方、アッパーグレードで勝ち組な奥様はこんな雑誌なんか見向きもしないだろう。だからこれ見て密かにニヤニヤする人はほとんどいないだろう。またこの内容が嘘だとしても、そもそも妊娠してる情緒不安定な人を煽ってどうすんの。差し引きすると社会的に大赤字だ。やめようよ。


しかし、「格差は胎内から」という台詞そのものは「やっぱりそうだったか」と内心思わせなくもない無茶な説得力と言葉の力を持っており、大変わかりやすく、忘れづらい。金になるだけでなく美しい。空気の読みっぷりといい、間違いなくプロの仕事だ。S級釣り師ってこういうのを言うのか。しっかり釣られ、1時間はいろいろ考えてしまった。こういう言葉は暴力そのものであり、科学的、論理的に正しくてもひ弱な台詞だと打ち消すことはできない。こういうのを見て不安になった人の疑念を消すには、同じくらい暴力的で、正しい言霊が必要なのだ。それってかなり困難だ。

釣られたあげく、ナイーブすぎ、取り越し苦労、余計なお世話かもしれん。しかし変な形で考えさせられ、闘志が湧いた。元気をわけてもらったようだ。
敵ながら天晴れと言うほかなし。